○10月30日(月)期日報告詳細――何故ですか?ただのTシャツじゃないですか。

○10月30日(月)期日報告

開廷前の傍聴席には、遠方から駆けつけたという傍聴人が数名いた。「反原発デモで不当逮捕に関心を寄せてきたんだよね」「園さんの本を読んできたんだよね」どういうわけだろうか、寄せ場の自己紹介の雰囲気だ。

そうだ。今日は、原告らの意見陳述、本人尋問が予定されていたのだ。時間も、これまでより長い二時間が予定されている。提訴から3年を経過しようとする本件国賠訴訟。現在まで、概要を理解できていない、だとか、争点整理が必要だとか、いうということで何度も事件内容のおさらいばかりしてきたように思う。ここに来てようやく原告側の証拠提出(現地でのDVD上映)に続いて、今回は、不当逮捕当日の事実が伝えられることになっていた。

そして、法廷傍聴席は、ほぼ埋められていた。いつもと違う雰囲気。ひとつ、原告はこれまでにない重要場面を目前に緊張している。ひとつ、傍聴人の面子が多様な興味関心にあふれている。後者、そこが法廷であってもどこでだって興味関心で繋がれる。不思議な気分で開廷を待った。開廷から5分、原告の一人園さんさが尋問のために裁判長の目前に立つやいなや判事が放った。

以下メモよりそのやりとりを記載する。

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志田原裁判長:そのTシャツは何ですか、今すぐ前を止めてください。
園:何故ですか?ただのTシャツじゃないですか。
志田原裁判長:それが出来なければ、この法廷では尋問は出来ません
園:何故か応えて下さい。
志田原裁判長:認められません。法廷の秩序雰囲気を害するからです。原告代理人はそれでいいのですか?
傍聴席:どのように害するのか教えて下さい。
裁判官長:今発言したものは誰だ!
法廷警備係:この傍聴人です。(といって、傍聴人を指す)
園:理由を教えて欲しいと言っているんです。
原告側弁護士(大口):えーと、どの文字ですか?よく見えないけど・・。裁判長が仰る、法廷の秩序とか雰囲気であるとか分かります。ただ、このTシャツとどのような関係があるのかを具体的に説明してもらえませんか。「雰囲気を害する」というのは結論だけであって理由について述べていない。それを原告も納得すれば、こんなことで時間を無駄に使うということはしません。説明さえあれば、原告は納得しないわけはないのだから説明願いたい。
志田原裁判長:「メッセージ性」のあるTシャツをここで着ることは許されないと言ってるんです。
園それはどういうメッセージですか。文字の入っているTシャツはいくらでもあると思いますけど。
志田原裁判長:私も尋問を開始したいわけですよ。
園:説明して欲しい内容は、このように強制的に暴力によって裁判所が特定のものを排除してもいいのかってこと。その必要性があるのかということ。
志田原裁判長:だから、「言葉」で言っているじゃないですか。
(以下「理由を言って欲しい」「許されない」の繰り返し)
志田原裁判長:進行について合議します。(といって、裁判官ニ~三分程度退席)
裁判官:合議の結果、園原告は退廷とします。
園:原告がTシャツをきているというだけで退廷にするなんて前代未聞。
志田原裁判長:今の発言はなんですか。取り消して下さい。
傍聴席:「取り消し」ってなんだよ。
裁判官:退廷。(ここで一名の傍聴人にたいし警備係10名程が取り囲み羽交い締め、身動きの自由を奪われて退廷となる。法廷内は騒然となり、傍聴席では「裁判所の暴力反対」「対象者への暴力反対」との声。廊下から、退廷となった傍聴人の悲鳴が聞こえた。)
園:彼を傍聴席に戻せ、嫌がってるじゃないか。訴訟団の人間だから、それをわかってやってるんじゃないのか。訴訟継続は彼を戻してそれからだ。それからやってやる。
志田原裁判長:「やってやってる」とは?
(このとき、10名程度だった警備係がゾロゾロと入廷し2~30人となったと思うと、すぐに園さんの両手両足をつかみ退廷させた。)
原告側弁護士(大口):裁判長が原告の着衣を問題にしている、この趣旨については理解できる。しかし、そもそも原告の着衣に何が書かれているのか、裁判官より近くにいる私の席からは分からない。着衣に何が書かれているのか確認されたんですか?されたのであれば、秩序を「どのように」害しているのかという説明が出来るはず。また、退廷となった傍聴人の一市民についても、「ここは法廷なのだから、理解できる説明が欲しい」というのは当然であるのではないか。正に、傍聴人のいうように、裁判というものは公平であるべきだと、その通りでしょう。Tシャツのメッセージ性と秩序との関係について、何の説明もないまま傍聴人の言動を問題にして退廷命令を出すということは、法廷警察権の濫用であるといえます。このような違法な法廷警察権の行使について異議を申し立てるとともに、退廷となった二名を直ちに法廷に戻すよう指揮をとっていただきたい。

特に園氏は尋問が予定されている重要な立場。このままでは、憲法32条で規定された裁判を受ける権利が大きく制限された状態にあるといえる。直ちに、退廷命令を取り消して下さい。
志田原裁判長:承りました。尋問開催と次回期日については裁判官で合議して決めて連絡します。

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途中、大口弁護士からの異議申し立てはあったものの、「承る」のみの応答に終わった。
そして、園さんの尋問は認められず、退廷となった傍聴人一名も法廷に戻ることはなかった。一方、A原告の尋問も先延ばしされた。
原告側川村弁護士からの事後説明によれば、次回期日は来年となる可能性が高いだろう、とのこと。

今回問題とされた園さんのTシャツについて触れたい。法廷での園さん服装はこうだ。

黒地の無地、否、文字入りのTシャツ・ジーパン・その上からネルシャツ、靴はスニーカー・・・と、まぁいつもの彼といったところ、いつもと違うような印象はない。

問題のTシャツの文字は、細い字で読めない。生地は黒で、問題の文字は灰色である。本人には失礼だが、汚れかなにかにも見えてしまう。ネルシャツを上着代わりにしているので、Tシャツの文字が見えたのは3文字程度。上着を脱ぐことはなかった。だから、裁判官は事前にTシャツに書かれた文字の情報を得て、問題視していた、そういうことだ。裁判官が、法廷内外での園さんの活動(着衣もふくめて)に何かしら注視している可能性が高い。だとするなら、審理にかかわる裁判官が、主観を排しまた原告当事者の(法廷外の)素行に影響されず審理に臨んでいるのかということに、正直、無理を覚える。

差別は「何をしたか」ではなく「誰がしたか」によって恣意的におきると思う。経験上、そんなことばかりだ。法律違反だとか、公共の秩序だとか、いわばタテマエを複線にして正当化される。今回の裁判所のように。園さんがきているものにメッセージ性があるかどうかではなく、「園さんが着ている」その一点のみに関心を払う。こんな差別が現代の裁判所に存在する。

そして、裁判所からは未だTシャツを着ていることを理由とする退廷への理由説明はなされていない。差別原理が働いているとすれば、誰にも、その説明などは出来ようはずはないだろう。差別と排除に理由などないのだから。

「つーか、裁判所は仕事しろよ」

私も、か細い声でそう言いながら法廷をあとにした。

(文:広田 有香)

「着衣から規定されうる身体」

「着衣から規定されうる身体」

雑感として。

これは「暴力」というか「暴行」だと思った。

怖くなって身震いをし、隣人の手を握った。自分も羽交い締めにされて連れ去られるごとき連想をするほど、退廷となったニ名の身体感覚を宿すように体中がしめつけられる感覚を覚えた。裁判所の退廷命令と退廷のときのやり方(官吏十数名によって両手両足を持つ)は、恐怖に思わない人はいないだろう。つまり、恐怖を心情にうったえ身体を管理する、というもの。裁判所は場合によっては、監置という名の身体拘束をもすることがある。
Tシャツが問題ではなくTシャツを脱ぐように言うことで、宿す固有の身体性を管理可能なようにする。いつかのラジオ体操のごとき、いつかの日の丸と君が代のごとき身体操縦を思い出した。そう、小学生の頃、君が代を大きな声で歌うまで帰宅させてもらえなかったこともあったっけ。過去の恐怖体験。ことの原理は同様である。

今回は裁判所が、原告にTシャツを脱ぐよう命じ、原告は理由をして欲しいと述べたところ退廷となった。傍聴人も説明をもとめたところ退廷となった。身体の自由を、奪われてだ。「はて、これは何かと似てはしないだろうか?」そんなモヤモヤが法廷で宙を舞って、意識がとおのく。

えっと、何だっけ。それ。

そうそう、何を隠そう「麻生邸リアリティツアー」だ。現地警備にあたっていた山口警部が、路上の歩き方を指示して「それならいいよ」と、事前に認めていたにもかかわらず、それに従った原告らを公安条例違反等で逮捕をした件。まるで同じ。

その麻生邸リアリティツアーにおける逮捕の不当性を審理するとする裁判所が、今日は、むしろ不当逮捕をした側と同じ立場に立っている。裁判所が公平性を欠く、ある傍聴人を監視し、執拗な荷物検査のあげくカメラ付携帯電話を持っている、ただそれだけの理由で法廷に入れない、ということがあることは知っていた。今日の法廷から、駆け抜けるほどのリアリティを感じた。「裁判所リアリティ・ツアー2012」とでもいえようか。

とにもかくにも、裁判所は機能不全に陥っている。

園さんは言う。
「(別件で)裁判所に入ろうとしたところ、官吏が集まって、“Tシャツを脱がなければ、入れないぞ”といわれた。裁判所の中には、すでに公安警察が入っており監視体制が敷かれていた。裁判所と公安警察が一体となって、特定の人物を排除していこうということになっている。これって、裁判所としてマズイでしょ」

ちなみに、メッセージ性を有するプラカード等(着衣はこれに含まれる)は庁舎管理権において取締ることが許されており、傍聴席も同様だ。法廷内着衣の一例、筆者のそれはこうだ。「白地のTシャツ、スカート(バーバリーのチェック柄)、大きくNの文字の蛍光色のスニーカー。フェイクファーの帽子。」書くとようやく自覚するが、メーカーが分かる着衣が2点ある。ここに『「メッセージ性」は無い』と言い切ることはできようか。

問いたいことが二つある。

これは裁判所に対してだ。『「園さんが着衣するTシャツ」「バーバリーのスカート」この二者の間にはいかなる差異があるのか。』『前者が許されず、後者だけ許される理由はどこにあるのだろうか。』

この問いに誰が答えられるのだろうか。ちなみに、裁判官は答えられなかった。最初から、答えなんてないのだから。答えがあるとすれば差別をしたかったから、着衣を問題にした。きっと、それだけのこと。

この社会にいる以上、意図する、意図しないには関係なく、「着衣する」ことが何らかのメッセージを孕むことにはなるだろう。受け取り手はさまざまだし、メッセージだっていろいろある。我々は一人では生きられない。よって、着衣の放つ言語(メッセージ性)から完全には自由になれっこないのだ。

メーカー名が入っているものであれば、その記号を街に流布して歩くことになるし、同じく傍聴に出かけていけてもそうだ。身体は、どんなときでも「広告化」しうるし、逆のパターンとして「広告化」を拒絶すること(それを、メッセージ性があるとして、裁判所は排除するのだが)可能性だって、ありうる。

具体的にいえば、前者は、バーバリーの服を着ればバーバリーの宣伝になるし、法廷で見かけたナイキの靴はナイキの宣伝になる。「着衣する」とは、そういう要素をもつ。この前提にたつと、裁判所が特定の主義主張(広告化する身体)だけを許している、という実態がうかがえる。

法廷の混乱のなか、そんなことを思った。広告となることだけが賛美され、広告への「拒絶化」は排除されうる。およそ裁判所が求める市民とは、そういった企業の広告化には抵抗せず消費する身体を持ちうる均質化された「市民」なのであろう。そういった存在となることは、考えることを放棄する行為に等しい。

ちなみに、今日、裁判長の言動から受け取った「メッセージ」はつぎのとおりである。

「・・・裁判所は信用できないところです・・・」

園さんの着衣に「メッセージ」があるとされるように、裁判長の顔、声、着衣、つまり威圧的表情にも「メッセージ」がある。ありとあらゆる物、それぞれに言語が「ある」。その延長線をたどるところに、社会の「歪み」が見えたりもする。今日のように差別をみるにつけ、「じゃぁあなたは本当にメッセージを放っていないの?」と、返したくなる。そんなふうに、いつ、誰が、どんなメッセージを放つか、受け取るかなんて、多様な組み合わによってなされている。すでに、想像の領域にはない。

「生身の身体を、自己のものとして享受して生き抜くことは、最も困難になってきている」法廷で、まざまざとこのことに気づかされたことで、深く心が痛んだ。と、同時に「法廷だけは、そうではないはずだ。公平なはずだ。」と、祈りにも似た感情をこれまでずっと長らく捨てきれずにいた自分がいたことを知った。「でもね、これが司法の現実なのだからさ」と、我に言い聞かせる。

現実をまっすぐに受け止めつつも、このような規定されうる身体性について、みんなで話し合えたらいいと思う。それが、生きる上で、個人に、社会に、司法に。最も根っこにある共通課題だと直感する。そんな法廷だった。

(文:広田 有香)

10月29日期日への地裁の妨害・排除に抗議する!次回は未定です

10月29日は二人の原告の長時間陳述という本番。しかし原告の一人が来ていた「イエス抗議!ノー排除!」のTシャツを脱がなければ地裁に入らせないという高裁・地裁、陳述させないという裁判官の前代未聞の妨害にあいました。そして法廷で一言抗議した事務局の仲間が裁判所外へ暴力排除され、それに抗議した原告も強制排除。このような裁判所の暴力を絶対に許しません。麻生弾圧の警察と同様に、裁判所までも「庁舎管理権」を乱用し思想・表現の自由を弾圧してきたからです。このため次回期日は未定です。地裁は強制排除をやめ、早く期日を定めよ。
訴訟団からの詳細なレポートはまた掲載します。まずは「木星通信」さん

http://jupiter-press.doorblog.jp/archives/19506349.html をご覧下さい。

地裁前での抗議映像です。http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=uhdolh67lkU
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